おすすめ度:★★★★★
公開:1993年1月1日
監督:陈凯歌
出演:张国荣,巩俐,张丰毅,葛优,英达,雷汉
時間:2時間51分
激動の時代を生きた京劇役者の波乱に満ちた生涯を描いた、中国、香港合作映画。
楼閣の女郎の私生児である小豆子は、京劇俳優養成所に連れられる。
厳しい稽古と折檻の中、仲間から娼婦の子といじめられる小豆子をことあるごとに助けてくれたのは、先輩の石頭だった。
成長した2人は、それぞれ程蝶衣(小豆子)と段小楼(石頭)という芸名を名乗り、『覇王別姫』 で共演しトップスターになる。
1937年日中戦争が始まり北京は日本の占領下となる。蝶衣の姿は日本軍の将校を魅了したが、小楼は軍人への態度から捕えられる。
やがて日本は敗戦し北京には中華民国軍(国民党軍)の兵士たちが入城する。
その後国共内戦で勝利した共産党が権力を握り時代が大きく変わりだす。
1966年文化大革命が始まり時代の波が彼らを飲み込んでゆく。
この名作を深く理解するにはあるていど中国近代史に対する知識がないと難しいのではないかと感じる。筆者自身、学生時代に一度見た記憶があるがいまいちよくわからない部分が多く、本当の意味で作品のすごさが理解できていなかった。
今あらためて見ると清朝末期から抗日戦争、中国革命の争乱、文化大革命の混乱までの激闘の時代を、中国の伝統文化である京劇を通し描かれる、圧倒的スケールの一大叙事詩に感嘆する。個人的にそれぞれの統治者の元で観客の姿や芸術の扱われ方が変換するさまが、統治者の特徴を見事に表現していて興味深いと感じた。
また主演の张国荣(レスリー・チャン)の妖艶で鬼気迫る演技が秀逸である。彼が映画の公開から10年後、物語の結末と同じように自ら命を絶ったのは有名な話。
そして特筆するべきは文化大革命の混乱と悲劇を正面から捉えているところ。ここを逃げずに描いたことがこの作品が今でも世界的に評価されている要因なのだと思う。脚本家の芦苇は当初ダミーの脚本を書き、検閲を通したという逸話が残っている。
作品が香港で公開された1993年当時中国本土では上映許可が降りなかったというが、後に時の権力者鄧小平の許可が降り一部修正を経て上映が始まったらしい。
中国映画史に燦然と輝く不朽の名作。中国映画を語るとき避けては通れない一本なのではないでしょうか。
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