おすすめ度:★★★★☆
公開:2022年12月22日
監督:林森
出演: 张继聪、袁澧林、区嘉雯、朱栢康、董安娜
時間:115分
世界的パンデミックに見舞われた香港を舞台に、清掃業を営む男性とシングルマザーの交流を描く人間ドラマ。日本では「星くずの片隅で」の邦題で上映された。
自身で清掃業を営む窄はコロナ禍で仕事が減る中過酷な肉体労働に明け暮れていた。
父親を早くに無くし競馬好きで持病もちの母親と慎ましくも誠実に生きる窄。
ある日シングルマザーのCandyが求人募集の広告を片手に現れる。
パートタイマーとして窄の元で働き始めるCandyだったが、ある日出来心でお客のマスクを盗んでしまう。
自分では買えない日本製マスクを手に入れ喜ぶCandyだったが、
客からの通報により窄に知られることとなり解雇されてしまう。
富裕層の子供がまだ使えるマスクをいとも簡単に付け替える姿を見た窄は、Candyにもう一度チャンスを与えることにする。
再び真面目に働きだすCandy。
次第に3人の仲も深まってゆき仕事も順調に回りだすのだが、
再びある事件が起き…。
感想
見終わったあと決してハッピーになれる映画ではない、むしろ突きつけられる現実に後味の悪ささえ感じさせられる。しかしその余韻が今でも私の心を掴んで離さない。このような余韻はいわゆる大衆向けのヒット映画では決して味わうことができない。
私はこのような余韻を感じられる映画が好きだ。
中国大陸の発展の影で経済が停滞する香港。私自身今年深圳行きの経由で香港に立ち寄ったが、コロナの影響が色濃く見受けられ街全体に活気がないように感じられた。コロナウイルスの発生により最も煽りを受けたであろう低所得層の生活や、やり場のない感情、負のループから抜け出せない中それでも必死に生きてゆこうとする香港人を描きだした本作品。
ハピーエンドとは程遠いエンディングにいたたまれない気持ちになりつつも、それでも誠実に生きようとする主人公「窄」の幸せを願わずにはいられない。主演の张继聪、ヒロインの袁澧林、脇役の朱栢康、搾取される側のそれでも懸命に生きていこうとする人々の表情と演技が余韻となり胸を掴んで離さない。
お涙頂戴のヒット映画では決して味わえない、余韻を楽しみたい人におすすめの一本です。
以下予告編