台湾海峡一九四九 (日本語)
龍 應台 (著), 天野 健太郎 (翻訳)
蒋介石国民党政府が台湾へ撤退した1949年を軸に、中国大陸と台湾の間の海峡を軸に激動の時代を描いたノンフィクション。訳者天野氏も言うように、日本では日中戦争は知っていても、文化大革命は知っていても、蒋介石と宋美齢は知っていても、国共内戦のことはあまり知られていない。第2次大戦が終わる1945年から中華人民共和国建国1950年までの大陸での内戦の様子を、敗れた国民党側、受け入れた台湾側、南方戦線にいた日本兵、台湾人日本兵、連合国軍捕虜、解放軍捕虜、大陸の農民など弱者の多角的視点から描かれていることに本書の価値がある。私自身としては長春包囲戦の記述に特に強い衝撃を受けた。
台湾外省人の著者は書籍の中で「どんな物事であろうと、その全貌を伝えることは私にはできない」と記している。歴史をどのように捉えるかは難しい問題ではあるが、勝者側から描かれた歴史の裏にある弱者の視点を持つことは、今後の大陸と台湾の関係を考える上で重要なことなのではないかと感じた。中国大陸側では本書はいまだ刊行されていないとのこと。